慶應義塾大学 湘南キャンパス 秋山美紀研究室 Miki Akiyama Lab

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2021年度 卒プロ

■2021年9月卒業生■

Mental Health Literacy Level of Vietnamese in Their 20s and 40s: A Mixed-method Study of Quantitative Survey and Interviews
Nguyen Chi Mai

【概要】
The promotion of mental health in Asia is a matter of urgency in the current situation. In many Asian societies, stigma against mental health is deemed as the key factor in preventing an effective promotion of mental health services. With Vietnam as a case study, this research aims to look at the current level of mental health literacy and existing misconception about mental illness in a country where mental health promotion is not widely available. The result of the cross-sectional survey suggested that the level of mental health literacy in Vietnam remains low regardless of the participants' characteristics. While age does not have an effect as initially expected, gender can be seen as a factor influencing the level of mental health literacy in participants. The thematic analysis of the interview suggested that while there still exist certain stigma and stereotypes about mentally ill people, there is a supportive and welcoming attitude towards those who are suffering. The common cause of this stigma is the lack of knowledge and understanding of mental illness, hence points to a need for new mental health programs by the government. Moreover, the study observed an overall strong willingness to participate and contribute by the participants. Mental health programs for different generations are also suggested by the study. Overall, even though the study highlighted the lack of knowledge and mental health literacy in Vietnam, the attitude and willingness of participants suggested that there is hope for a change for the better.
キーワード:1. Mental health in Asia / 2. stigma / 3. mental health literacy / 4. public awareness / 5. mental health promotion / 6. mental health education / 7. attitude towards mental health



The Effectiveness of Art Therapy in Mental Health Treatment for Adolescents and Young Adults: A Systematic Review and Interviews
Huynh Hanh Nguyen

【概要】
Introduction: Despite being the major cause of worldwide suicide cases, mental illness and disorders are largely unaddressed and undermined in their extremely negative impact on human life, leading to few chances for people to access treatment. If available, such treatments are often expensive and rarely practiced, especially in Asia. This situation is the most exacerbated in adolescents. This thesis aims to introduce a more affordable, accessible, and efficient self-help method to the youth community through examining the efficiency of Art therapy.
Methodology: Under the format of a systematic review, this study looked into 13 academic papers which address Art therapy as an intervention alongside other traditional treatment meth-ods in aiding adolescent patients with common psychiatric diagnosable disorders. In order to investigate the practicality of this form of intervention in real-life settings, two interviews were conducted with a patient and two Art therapists.
Result: Selected studies have shown positive conclusions about the implementation of Art therapy in psychiatric sessions in destressing and recovery. Findings from interviews suggest the high applicability of this intervention in real-life settings. Nevertheless, the sample from the systematic review also showed a significant lack of research for Art therapy in Asia coun-tries as a whole and Japan in particular.
Discussion & Conclusion: Art therapy is very efficient in treating patients with common men-tal disorders; however, its proficiency is not yet clearly justified. Further research with a larger sample can provide more solid evidence on the effectiveness of this treatment.
キーワード:1. Art therapy / 2. Adolescence / 3. Depression / 4. Anxiety disorder / 5. ADHD / 6. Eating disorder / 7. Substance misuse disorder / 7. Conduct disorder



■2022年3月卒業生■

地域におけるIT活用の推進支援-慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス周辺で地域住民のIT活用を支援する-
総合政策学部4年 久松 英嵩

【概要】
本論文は、筆者:久松英嵩が行った地域におけるIT推進活動について記したものである。日本では2000年より総務省を中心にデジタル化の推進に取り組んできた結果、ICTを利活用することのできる環境が整備された。しかしながらこれはICTが十分に利活用されることとは別の話であり、地方行政や住民の地域参加の現場では未だICTが十分に利活用されているとは言い難い。中でも高齢者を中心としたITリテラシーの不足はICTの利活用が進まない大きな要因となっており、サポートが必要な状況にある。
筆者が行ったIT推進活動は慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパスの周辺地域においてITの活用を推進することを目的として行ったものであり、2019年4月から2021年11月にかけて同キャンパスの周辺地域で暮らす住民を対象とした。
活動はアクションリサーチの手法を参考としつつ、地域住民と複数回の交流を行う中で内容を見直しながら進めた。本論文ではこの活動を神奈川県藤沢市の湘南大庭地区で行ったポータルサイトの改良と、同藤沢市の遠藤地区および神奈川県寒川町にて行った高齢者向けのスマホ教室の2つに大別して記している。
並行して進めた2つの活動から、地域生活においてITが活用されるようにするためには関係者が目指す未来の姿を共有した上でスタートからゴールまでの道のりを明確にし、働きかけを必要とする対象と働きかける内容について検討を重ねた上で活動に取り組むことが望ましいと結論付けた。
また、IT推進活動は個人が短期間で影響をもたらすことのできる範囲が狭いことを受け、活動を継続し広げていくことの重要性を示した。
キーワード:1. IT / 2. ICT / 3. デジタル / 4. 地域 / 5. 推進 キーワード:1. IT / 2. ICT / 3. デジタル / 4. 地域 / 5. 推進



あがりへの対処過程を明らかにする―柔道競技者の視点からー
環境情報学部4年 藤井 崚将

【概要】
背景:本研究は、緊張やプレッシャーによって、本来のパフォーマンスを発揮することができなくなる「あがり」について、プレッシャーを感じて、その発現から対処までのプロセスを明らかにした研究である。先行研究では、あがりやすい性格の類型や、あがりが発現する機序が報告されていたものの、柔道におけるあがりの対処方法に関する先行研究はなかった。そこで、本研究はアンケート調査後にインタビュー調査を行う、混合研究法の説明的デザインを用いて調査を行った。
目的:本研究では、筆者が大学部活動に所属し、競技をしている柔道に焦点を当てて調査を行った。柔道の試合に着目し、多くのプレッシャーを感じる重要度の高い試合におけるあがりへの対処方法のプロセスを明らかにすることを目的とした。
方法:調査対象者は、2019年度以降の柔道の試合に出場した経験のある、現在の大学生である。まず、アンケート調査によって、柔道の試合において、あがりがどのくらいの割合で見られるのかについて調べるとともに、あがりに対する自己評価を量的に収集した。 その後、アンケート回答者の中から、3名のインタビュー対象者を選定し、インタビュー調査を行い、「あがり」への対応方法や克服方法のプロセスを明らかにするために、グラウンデッド・セオリーを用いて、カテゴリ概念図にまとめた。
結果:多くの人が、何らかのプレッシャーを感じ、パフォーマンスの低下を少なからず感じていることが明らかになった。また、アンケート項目の対処法の自由記述欄から、柔道におけるプレッシャーの中で回答が多く見られた5つと、あがりへの対処方法6つ項目を抽出された。また、インタビュー調査からは、柔道の試合におけるあがりへの対処プロセスは、【強いプレッシャーに向き合う】という現象を中心に、(1)<試合への思い入れ>(2)<練習での感触の確認>(3) 【強いプレッシャーと向き合う】(4)<試合に向けた覚悟>(5)<見についている対処法での心身統一>(6)<実力を発揮できずに終わる>(7)<本来の力を発揮する>という7つの概念が抽出された。
結論: 重要な試合を迎える柔道競技者は、なんらかの強い(1)<試合への思い入れ>を抱えており、(2)<練習での感触の確認>を行う。そこで失敗した時の対処法を想定する力や、自分への自信が高いとき、試合前の体調や試合前の練習の感触が良好な時には、(3) <試合に向けた覚悟>を行うとともに、 (4)【強いプレッシャーと向き合う】ことを実施し、 (5) <身についている対処法での心身統一>を行った。ここで、あがりへの対処の効果高く、精神のコントロールの度合いが大きいと、(7) <本来の力を発揮する>ことができる。 また、インタビューから、勝利を目指して、競技スポーツを行うことには、日常生活でのあがりを軽減することができることが示された。
キーワード:1. あがり / 2. パフォーマンス低下 / 3. 緊張 / 4. 試合 / 5. 柔道 / 6. ラウンデッド・セオリー・アプローチ / 7. 混合研究法 / 7. プレッシャー



大学生ボランティアの活動継続決定に 至るまでのプロセス 〜こころん柔道教室に参加する学生ボランティアからのインタビューを通して〜
総合政策学部4年 稲葉 航希

【概要】
2背景:近年、児童相談所が対応する児童虐待件数は年々増加している。「児童虐待」をはじめ、親から適切な養育を受けられない子どもたちの多くは、児童養護施設での生活を強いられている。保護者からの虐待経験に加え、行政の介入によって家族からも自宅からも引き離された経験は、子どもたちに心理、発達的に影響を及ぼす。実際に、社会的スキル獲得や対人関係構築の難しさ、また、子ども自身の自己肯定感の低さが指摘されている。そうした経験をした子どもたちが健全に育ち、社会人として自立できるようになるには、信頼に値する大人と出会い、その大人たちと子どもたちが信頼関係を築く経験をすることが重要である。児童養護施設には、多くのボランティアが子どもの支援者として関わっている。しかし、最も信頼すべき親を頼ることができず、しかも家庭で親や大人から虐待を受けたことで、心に傷を負った子どもたちとの関わりは容易ではない。特に大学生ボランティアの活動継続は大きな課題とされている。子どもたちが大学生との関わりの中で基本的信頼関係を再構築し、「他者を大事にし、自分も大事にする」という自己肯定感を高めることができる。そこで、「習い事」としてのスポーツにボランティアとして活動する大学生に焦点を当て、活動継続の要因を探ることとする。
目的:児童養護施設に入所する子どもたちに対して、習い事として「柔道教室」を無償で提供しているこころん柔道部の活動において、参加している大学生ボランティアが子どもたちと関わる中で、どのような葛藤をしながらボランティアを継続参加しようとしているのか、そのプロセスを明らかにする。
方法:大学生ボランティア5人に対して半構造化インタビューを行い、グラウンデッド・セオリー・アプローチによる分析を行った。
結果:分析の結果、大学生のボランティアが継続参加を決定するプロセスにおいて、中心にあったのは【信頼関係の形成】という概念であり、【信頼関係の形成】とそれに関連する《子どもと自分との関わり合いの評価》《周囲への相談》《子どもとの関わり合いの見つめ直し》《ボランティアへの参加継続の検討》《継続しない》《継続を決定する》という7つのカテゴリー・サブカテゴリーで構成されていた。
結論:子どもたちに柔道を教えるというボランティアに参加する大学生ボランティアを対象に、インタビュー調査からボランティアを継続するまでのプロセスについて検討を行った。子どもとの信頼関係の形成が、の活動の中の喜びに繋がり、前向きな参加継続に繋がる要因になること、ボランティアを継続していく上で、第三者からのサポートが重要な役割を担っていることが示唆された。また、ボランティア活動に対して肯定的な継続参加を決定する人がいる一方で、ボランティア活動に対してネガティブな思いや受け身な思いがある人の検討要素の違いが示された。
キーワード:1. 児童養護施設 / 2. 大学生 / 3. ボランティア / 4. グラウンデッド / 5. セオリー / 6. アプローチ



他者からの評価が原因で身体醜形懸念を持つようになった人が自信を回復するためのプロセス
総合政策学部4年 栁原 真由

【概要】
本研究は、他者から身体的外見について否定的な発言をされたことが原因で身体醜形懸念を持つようになった人が自信を回復するプロセスを明らかにすることを目的とした。自信の回復は、身体的醜形懸念を克服した状態と定義した。
本研究では、20代の女性1名に半構造化インタビュー調査を実施し、身体醜形懸念を持つようになった経緯、自信を回復した経緯、コンプレックスに感じる体の部位に対する現在の考えについて質問した。インタビューで得られたデータはストラウス版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析を行った。
分析の結果、身体醜形懸念を持つようになった人が自信を回復するプロセスにおいて、中心にあったのは【一重まぶたを気にしない他者の存在の認識】という概念であり、【一重まぶたを気にしない他者の存在の認識】とそれに関連する《二重まぶたへの強いこだわり》《体調不良による肌の状態の悪化》《一重まぶたのままでの生活》《二重形成の再開》《《二重形成の継続に対する疑問》《一重まぶたの肯定》《状況に応じた二重形成の実施》《一重まぶたである自分自身の肯定》という9のカテゴリーで構成されていた。本研究の結果、身体醜形懸念を持つようになった人が自信を回復する要因として、コンプレックスに感じる部位のイメージのゆがみの改善、同様の身体的外見である他者が認められている状況に気づくこと、コンプレックスに感じる部位をあえて社会的場面に晒すことが関連する可能性が示された。
キーワード:1. 身体的外見 / 2. 身体醜形懸念 / 3. 身体醜形障害 / 4. 立ち直り