慶應義塾大学 湘南キャンパス 秋山美紀研究室 Miki Akiyama Lab

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2016年度 卒プロ

2016 年度、秋山は米国留学中で不在でしたが、秋山研究会はピアサポート研究会として継続し、6名の4年生が立派に卒業研究プロジェクトを完成させました。
各自の関心に基づく研究テーマに対して、リサーチクエッションを立て、データの収集と分析を行い、全力を尽くし、読み応えのある卒業論文になりました。 全5題のタイトルと論文要約をご紹介します。
なおSFC学生の皆さんは、学内ネットワークからSFC卒プロデータベースで全文を読むことができます。


■2017年3月卒業生■

中学高校におけるメンタルヘルスリテラシー向上のために
総合政策学部4年 陣内 友莉

【概要】
平成24年に、精神疾患は5疾病の一つとなり、日本におけるメンタルヘルスの問題は重点的な対策が必要な問題の一つであるといえる。また、中高生に着目すると、近年少子高齢化で子供の数が減少しているにも関わらず、中学生の不登校児数は増加傾向にあり、8割以上の高校で不登校児が在籍しているという現状がある。  先行研究により、メンタルヘルス教育を行うことでメンタルヘルスリテラシーを向上させることができ、かつメンタルヘルス向上に影響を与えることが示唆されたが、メンタルヘルス教育は未だ発展途上であり、普及の課題などがあることが分かった。  本研究では、生徒と教員にアンケート調査を実施し、現場の課題を明らかにした上で、メンタルヘルスリテラシー向上の方策提案を目的とした。  アンケートの結果、特にメンタルヘルスに関するイメージ改善が重要だということが分かったが、生徒と教員で対策に対する認識に差があった。そこで、教育ではなく、より生徒に寄り添ったワークショップが有効であることが示唆された。 また、生徒は教員とのコミュニケーションに期待しているが、教員は生徒とのコミュニケーション以外にも多くの業務やストレスにさらされている状況であり、教員に対するサポートの充実も早急に解決すべき課題であることが分かった。
キーワード:1. メンタルヘルス / 2. メンタルヘルスリテラシー / 3. 不登校 / 4. 中学生 / 5. 高校生



若年の女性乳がん及び子宮頸がん患者における配偶者・恋人の相互作用について
環境情報学部4年 宮田 侑希乃

【概要】
 がん患者とその配偶者に着目した研究は米国と比べると、日本ではあまり行われていない。それが恋人同士になると全く見つからない。しかし、がん患者にとって配偶者・恋人は精神的にも身体的にも一番の影響を与えるといわれている。本研究はその中でもよりパートナーとの関わりが重要となってくるであろう、若年の女性乳がん患者及び子宮頸がん患者とその配偶者・恋人を対象とした。  若年の女性乳がん患者が感じるパートナーへプラスの思いは5カテゴリー、マイナスの思いは5カテゴリーによって示された。特徴的であったものは、プラスの思いが《女性として変わらずに接してくれる》であり、マイナスの思いは《女性としての自信がなくなる》、《病気になったことを申し訳なく思う》であった。  若年の子宮頸がん患者が感じるパートナーへのプラスの思いは、6カテゴリー、マイナスの思いは7カテゴリーで示された。特徴的であったものは、プラスの思いが《一番に考えてくれる》であり、マイナスの思いは《協力してくれない》、〈性行為が怖くなる〉であった。  ほとんどのがん患者はパートナーの「ただそばにいるだけ」をサポートだと感じており、これはパートナー側としても簡単で、パートナーにとってもプラスの作用を持つとても重要な相互作用と言える。
キーワード:1. 若年がん患者 / 2. 女性器がん / 3. パートナー/ 4. カップル / 5. 相互作用



若手就農者の六次産業化農業の事例研究--グラウンテッド・セオリー(SC-GTA)による質的分析を通して--
総合政策学部4年 早川芳 

【概要】
現在、日本の農業はあらゆる問題を抱えている。後継者不足により販売農家の減少、農業従事者の高齢化、耕地面積の激減と、問題は数多くある。新聞、テレビ、インターネットなどメディアを通して多くの農業の問題が顕在化し、世間のイメージも良くない。これらの問題の原因は一点に絞られることができず、解決されないまま半世紀が過ぎようとしている。一方で、親元で就農し、農業だけを生業とし地域を巻き込みながら魅力的にビジネスを展開している若手就農者がいることも事実である。近年は彼らに対してスポットがあたることもしばしばあり、その姿がメディアを通して知られるようになってきた。ただ、研究として彼らに焦点を当て、その実態が紐解かれることはなかった。  そこで本研究では「これからの農業のあり方」を検討する。六次産業化農業に着手する若手就農者三名にインタビュー調査を行い、ストラウス・コービン版のグラウンテッド・セオリー・アプローチ(以下SC-GTA)を用いて、六次産業化農業の実態を調査した。その結果、高収益を得る農業の仕組みには、5つの重要なファクターがあることがわかった。それは①経営感覚がある、②こだわりの農業をやる、③価格の決定権を持つ、④販路の確立をする、⑤役割分担をする、に分類された。また、彼らの言葉からは地域づくりの重要性や、消費者との接触の必要性も明らかとなった。このような結果を受け、私は情報社会を活用して、農業をもっと可視化できるようにすること、農業者の感覚を伝えるようにすることの必要性を感じた。そして、日本の農業の根本は家族経営であり、地域住民との協力から成り立つことを再認識した。それはまさにコミュニティつまり、人との繋がりをベースにしたビジネスであり、今こそ、繋がりを重視した農業を展開することが日本社会に求められることなのではないだろうか、と考えた。
キーワード:1. 農業/ 2. 六次産業化/ 3. コミュニティ/ 4. 地域活性化



健康活動におけるネットコミュニティーの有効性~ピアサポート強化の視点から~
環境情報学部4年 山崎 彩可

【概要】
本研究では、健康活動としてダイエットをする人々たちが、ネットコミュニティーを活用することでダイエットの継続を促進することを目的とし、ネットコミュニティーでの行動変容促進プログラムを開発した。ダイエットに効果的な食材の提案や、運動を促すプログラムをアプリ上で企画し、アプリユーザーの利用頻度、体重と体脂肪率の増減率、ユーザー同士のコミュニケーションと体重変化の関係性、行動変容についてのアンケートを通して評価を得た。その結果、行動変容促進プログラムにより、体重と体脂肪率は相対的に減少し、プログラム期間中にコミュニケーションをとりあったユーザーはその後の体重が減少する傾向が明らかになった。
キーワード:1. ダイエット / 2. 行動変容 / 3. ネットコミュニティー / 4. ピアサポート



睡眠障害の要因と改善策の検討 -地域疫学調査データの探索的分析-
環境情報学部4年 川合 涼貴

【概要】
私たち人間は人生の約3分の1を睡眠に費やしている.睡眠には,休息の他に身体の発育と修復や各種免疫機能の亢進など人間にとって重要な役割がある.十分な睡眠が得られないと体力,注意力,判断力の低下などの身体的・精神的機能へ影響があり、それによる損失額は我が国で5兆円を越えると試算されている。睡眠の改善は現代において重大な課題であることから、本稿では,睡眠の予防,改善を目的に,不眠症の早期診断法の検討と,睡眠関連要因の探索を行った.  鶴岡みらい健康調査のデータ(34歳~74歳の男女2654人)を用いて、まず不眠症の早期診断法の検討として,不眠群と健康群で,血漿中代謝物の比較を行った.その結果,不眠による代謝の違いは見られず,代謝物を用いた早期診断は現時点でできないことがわかった.次に関連要因の探索として,日常生活に関するアンケート結果(N=2613)を解析した結果,主観的ストレスが先行研究と同様に不眠症や睡眠の質に大きく関連していることが示された.特に,女性では対人関係に関することが睡眠の質に関連していることがわかった.女性で差がみられた対人関係は,主観的なストレスと関連があることから,女性のストレスには対人関係が関わっており,それが不眠や睡眠の質の低下につながっていることが示唆された.
キーワード:1. 睡眠 / 2. 不眠 / 3. 不眠症 / 4. コホート研究 / 5. アテネ不眠尺度



吃音に対する演劇の有用性
環境情報学部4年 高橋 拓也

【概要】
吃音者に対して、演劇がその不安感を取り除くという有用性を示すために、吃音者に向けて演劇の要素を取り入れたワークショップを行った。期待していた効果は図ることはできなかったが、吃音を肯定的に捉えている人は演劇に拘らずスピーチやプレゼンなどの自分なりに吃音と向き合う改善ツールのようなものを持っている可能性が示唆された。
キーワード:1. 吃音 / 2. 演劇 / 3. 社交不安障害 / 4. 自意識 / 5. 認知行動療法