慶應義塾大学 湘南キャンパス 秋山美紀研究室 Miki Akiyama Lab

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2019年度 卒プロ

■2019年9月卒業生■

防煙教育の必要性の検討
総合政策学部4年 大西 宏佳

【概要】
たばこには発がん性の物質が含まれており、喫煙開始年齢の早期化によって成人後の健康リスクが増大するだけでなく、喫煙年数が短い若年期でもニコチン依存形成や肺機能の低下、肺発育などの障害が引き起こされる。このように喫煙には多くのリスクが伴うため、喫煙者を減らすための禁煙運動も大切ではあるが、未成年者に対して喫煙による健康被害を明示し、喫煙のリスクを周知させて将来の喫煙者を生み出さないような取り組みにも早い時期に力を入れる必要があると考えられる。1996年に厚生労働省「健康日本21」では、2010年までに未成年の喫煙率を0%にするという目標を掲げていた。結果としては割合を下げることはできたが0%という目標達成には至らなかった。そしてその2010年には2022年までに未成年の喫煙率を0%にするという以前と同じ目標が掲げられた。同じような防煙教育を提供するだけでは、今回の目標も達成するのは難しいだろう。そこで本研究では首都圏在学の大学生を対象に、これまでの喫煙経験、身近にいる喫煙者などの周りの環境や防煙教育の有無等のアンケート調査を実施し、どのような防煙教育が効果的であるかを考察した。その結果「防煙教育の経験あり」と回答した喫煙者率は「防煙教育の経験なし」と比べて低いことが示された。防煙教育を受けている学生の方が喫煙者は少ないが、まだまだ減らせる余地はあると考える。身近に喫煙者の友人や先輩がいる割合も高かったので喫煙の一般知識を習得させる教育だけではなく、将来たばこが吸える環境に自分の身が置かれたときに正しい判断が出来るようなプログラム内容の教育を行う必要があると結論づけた。
キーワード:1. 喫煙の影響 / 2. 喫煙防止 / 3. 中学生 / 4. 小学生 / 5. 教育



■2020年3月卒業生■

発達障害児の母親の悩みと添い遂げる社会のあり方を探る
総合政策学部4年 阿部 愛里

【概要】
発達障害に対しての社会的な認知は広がりをみせているものの、発達障害児の家族や⺟親に対する⽀援が⼗分かつ適切に⾏われているのかは明らかになっていない。そこで、本研究は、発達障害児を育てている⺟親はどのような悩みを持っているのかを明らかにし、そこから発達障害児の⺟親⽀援の現状を検討することを⽬的とした。
⽇本最⼤級の発達障害のウェブメディアであるLITALICO 発達ナビのQ&A領域に投稿された2018 年から1 年間の約22,000 件の⺟親のインタラクションをテーマティックアナリシスで分析し、⺟親が抱える悩みを分類した。
その結果、わが⼦の障害受容や⼦どもの将来の不安を含む「障害児の親特有の⼦育てに関する悩み」、障害症状や特性への対処法、発達障害の疑いに関する悩みを含む「障害症状への対処法の悩み」、教育機関への不満や要望を含む「⽀援制度・教育機関等の社会環境に関する悩み」が多数を占めた。
この結果を踏まえた考察から、現⾏の⺟親⽀援の改善点としては、ペアレント・トレーニングへのアクセス、教育機関の合理的配慮のさらなる普及、先⽣の学習内容をレビューする仕組みが重要であることを⽰した。今後、⺟親⽀援の在り⽅としてオンラインでの⽀援環境を含んだ施策が望まれる。
キーワード:1. 発達障害 / 2. 発達障害児の⺟親 / 3. 族⽀援 / 4. ⺟親の悩み



アルコール依存症を乗り越えた家族の体験―苦悩と立ち直りの語りから―
環境情報学部4年 田畑 佳央理

【概要】
アルコール依存症は、患者本人だけでなく、家族をはじめとする周囲を巻き込み苦しめる病である。アルコール依存症は偏見を持たれやすいケースが多く、病気という認識が十分にない場合も多い。そのため、自分自身がアルコール依存症だと認めるまでに時間がかる、あるいは、その家族は誰に頼って良いかわからず、途方に暮れてしまうということが起こってしまう。本研究では、アルコール依存症者の家族としての困難を乗り越えてこられた5名の方々へのインタビューを通して、患者本人とその家族が快方へと向かうことができた理由を明らかにすることを目的とした。先行論文調査およびインタビュー調査の結果、アルコール依存症の家族という立場を乗り越えてこられた方々は、依存症者の病識不足や、無責任な言動による精神的苦痛など様々な困難を経て、長い時間をかけて回復へと辿り着いたということがわかった。
キーワード:1. アルコール依存症 / 2. ピアサポートグループ / 3. 家族支援 / 4. 小学生 / 5. 共依存



退職後の高齢者が地域活動にコミットするプロセス
総合政策学部4年 中川 優渚

【概要】
人生100年時代と言われ、65歳を過ぎた定年退職後の人生も短くはない時代へと変化し続けている。医療技術の発展などに伴って寿命が延伸する一方で、社会の中で生きがいや役割を持ち続けながら生活する事の重要性も指摘されている。仕事を退職した後に、地域で生きがいを持って生活していくにはどうしたらいいのだろうか。そんな思いから、高齢者が活躍できるコミュニティーの1つである「自治会」にターゲットを絞り、地域活動に参加する方々のライフストーリーを元に、活動にコミットするまでに至ったプロセスを明らかにしたいと考えた。本研究は、湘南大庭地区の自治会活動に積極的に関わる3名のリーダーの方々にインタビューを行い、地域活動に積極的にコミットするまでのプロセスを把握、活動に参加するきっかけとなった具体的な要因を明らかにする事を目的とした。インタビューを行い、地域活動に積極的に貢献する3名の共通項をテーマティック・アナリシス法を用いて導き出した。研究の結果、共通項目から次のテーマが生成された。若年層時代からの地域とのつながり、地域活動に参加する誘いや声がけを得られる環境の必然性である。どれほど地域とのつながりを持ち続けられる環境にいるかどうかが自治会活動への参加を左右すると結論づけた。
キーワード:1. 地域活動 / 2. 交流 / 3. アクティブシニア / 4. 高齢化



親の統制的な養育行動が、思春期の子供のメンタルヘルスに与える影響―中高生の意識調査データを用いた探索的分析―
総合政策学部4年 金 裕奈

【概要】
親が子どもに統制的に勉強するよう声がけすることは、特に思春期以降の子どもには好ましくない影響があるという先行研究がある。そこで本研究は、親の学業に関する統制的な養育行動と、子供のメンタルヘルスにどのような影響を与えるのかを明らかにすることを目的とした。全国の中高生とその親のデータ「NHK中学生・高校生の生活と意識調査(2012)」の中から、説明変数は子どもの勉強に関する親の行動のデータを、従属変数のメンタルヘルスは、病理現象の質問項目を用いた。ロジスティック回帰モデルを用いて推計を行った結果、親が統制的な養育行動が、子供の病理現象に影響している可能性が示された。また、父親の統制的な行動が、母親の統制的な行動よりも、子供の病理現象へ与える影響が大きいという結果も得られた。本研究の結果から、思春期の子供を持つ父親と母親の両方を対象にしたペアレント・トレーニングプログラムの重要性が示された。また、子供自身が親の統制的な態度が心理状態に影響しうることを意識し、自衛策を講じられることも重要である。そうした視点から思春期の子供へのメンタルヘルスリテラシー教育が充実していくことが望まれる。
キーワード:1. 親の統制的な養育行動 / 2. 思春期 / 3. メンタルヘルス / 4. 病理現象



定年退職前の男性が集うコミュニティの構築向けて
環境情報学部4年 原田 浩平

【概要】
我が国では、高齢社会で顕在される問題を解決するための手段として高齢者の社会参加が推奨されており、定年退職前から地域コミュニティに参加することが定年退職後の社会参加を促すことに繋がり重要だと提唱されている。その一方で、実際に定年退職前の50歳前後の男性が集うコミュニティに着目した研究は見られず、どのように働きかけることが50歳前後の男性が地域コミュニティに参加することを促すことに繋がるかはまだ明らかになっていない。そのため、本研究では実際に50歳前後の男性が集う場となっている床屋「THE SMILE COMPANY」着目し調査を行った。その結果THESMILE COMPANY は以下のような特徴を持った地域コミュニティであった。定期的にセミナーを開催している。中高年男性の悩みをよく理解している人がいる。お酒を片手にざっくばらんに語り合える場を用意している。セミナーのテーマは多岐に渡り、いずれも中高年の男性を対象にしている。専門の講師を招聘している。自然と中高年の男性が多く集まる。メンバーが固定されているわけではない。また、50歳前後の男性がTHE SMILE COMPANY に参加するきっかけとなったのは大きな要因として【危機意識】と【知的欲求を満たすため】の2点、継続の要因として【知的欲求を満たすため】、【安心感を得られる】、【捉え方の変化】、【人との繋がりの広がり】が挙げられた。これらの特徴を備えた場作りを行うこと、早期から危機意識に働きかけることを提案する。
キーワード:1. 地域コミュニティ / 2. 床屋 / 3. 中高年 / 4. 男性



小学校中学年を対象としたがん教育プログラム評価の試み―山形県鶴岡市での実践より―
総合政策学部4年 津田 ありさ

【概要】
1981年以降がんは日本人の死亡原因の第1位になっており、政府としてもがん対策に力を入れている。がん対策の基盤の1つとしてがん教育やがんに関する普及啓発は重要視されているが、小学校でのがん教育は未だに実施率が5割程度にとどまっている。中でも、小学校中学年(3・4年生ごろ)以下の年代での実施例はほとんどない。小学校高学年と比べて中学年の児童の理解力は劣ってしまうため、中学年でも理解できるがん教育プログラム作りが課題となる。本研究では小学校中学年の発達的特徴を考慮した上で新たながん教育プログラムを作成し、その効果を検証した。作成したプログラムは24名の小学3・4年生を対象に実施され、アンケートを通して効果検証を行った。参加した児童を対象にした2種類のアンケートと、児童の保護者を対象とした、合計3種類のアンケートを行った。その結果、学習内容を視覚的に見せる工夫や具体例の使用が理解度向上に深く関わっていることが明らかとなった。学習意欲の向上や予防行動の実施にもつながっており、プログラムは有効であった。また、参加した児童が周囲に学んだことを報告する子供が多いことから、家族にも「学習意欲の向上」や、「予防行動の促進」といった変化が起こることが示唆された。以上の結果から、本研究では小学校中学年の児童に対するがん教育は可能であるが、高い効果を発揮するためには視覚化や具体例の使用等の教材への工夫が必要であると結論付けた。
キーワード:1. がん教育プログラム / 2. 小学生 / 3. 教材



日本的な食事パターンの定義―疫学調査に基づくシステマティックレビュー―
環境情報学部3年 上野 碧葉

【概要】
本研究では,日本的な食事パターンの定義を明らかにすることを目的に,疫学調査に基づくシステマティックレビューを実施した.複数のデータベースとハンドサーチで検索をし,日本的な食事パターンに関する査読論文を特定した.入手された9件の論文より,日本的な食事パターンに含まれる食品は,21種類あることがわかった.含まれていた食品は,摂取量と特徴づける食品の2種類に基づき分類されていた.また,9件の論文に掲載されていた食品の総数に対して,含まれていた食品が占める比率を示した構成比率を計算した.その結果,定時づける食品名の中でも,構成比率50%以上を占めていた主要な食品は,魚介類・野菜類(漬物)・きのこ類・藻類・豆類(だいず)であることが明らかになった.さらに,豆類(だいず)・,みそ汁・みそに関しては,大豆製品と関連する発酵調味料・発行調味料を使用した料理を含むだいずをベースとした植物性たんぱく質,魚介類に関しては,多価不飽和脂肪酸が豊富な魚類を含む魚介類と換言できることが示唆された.これらの結果は,従来より多様な定義が混在していた食事パターンの一義的な定義の確立に貢献しうるという点で有用である.
キーワード:1. 食事パターン / 2. 日本食 / 3. 定義 / 4. システマティックレビュー / 5. 疫学調査



山形県鶴岡市に拠点を置くがんサバイバーがピアサポート活動を行う意義
環境情報学部4年 小黒 ひかる

【概要】
日本人の寿命が延伸し、がんを経験した者(以下、がんサバイバー)が急増している昨今、「第3期がん対策推進基本計画」(厚生労働省平成30年3月)の、3つの全体目標のうちの1つに、「尊厳を持って安心して暮らせる社会の構築」が掲げられている。そして、そのために、国および地方公共団体が患者団体等と協力することの必要性を謳っている1)。さらに、がんサバイバーが、ピア(仲間)としてがん患者を支援する「ピアサポート活動」を普及させるための措置を講じることも明記された1)。また、がん医療資源が乏しい地域では特に、患者をサポートする地域資源として、長期サバイバーらによるピアサポート活動が注目されている。そこで、サバイバーとしてピアサポート活動を継続している当事者たちが、ピアサポート活動をなぜ行ってきたのか、気持ちの変化やプロセスについて明らかにすることを目的とした。この研究を行うフィールドとして、山形県鶴岡市で12年にわたってがん患者の自発的な活動を支援してきた「からだ館」を選んだ。今回は、毎月第一金曜日に開かれる、からだ館のがん患者会「にこにこ倶楽部」の参加者6名を対象に、がんサバイバーがピアサポート活動を行う意義について話を聞いた。分析結果より、がんサバイバーは患者会で同じような経験をしたサバイバーと出会うことで、がん治療直後から長く続いていた気持ちの落ち込みや不安から解き放たれ、前向きに日々を暮らしていこうというポジティブなマインドへ変化を遂げていることが明らかになった。また、自身の経験を語り、元気を取り戻していくプロセスを経験した者は、他の参加者と関わりたいという気持ちを強く持つようになり、他のサバイバーに元気や勇気を与える存在になっていく。他の仲間が元気を取り戻す姿を見ることは、活動するサバイバーにとって喜びであり、また、他者の回復を実感することが自信や自己効力感につながっていることも示唆された。
キーワード:1. がん / 2. 長期サバイバー / 3. ピアサポート / 4. 意義 / 5. 質的研究