慶應義塾大学 湘南キャンパス 秋山美紀研究室 Miki Akiyama Lab

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2018年度 卒プロ

2018年度は、9月に2名、3月に4名の計6名の4年生が立派に卒業研究プロジェクトを完成させました。
各自の関心に基づく研究テーマに対して、リサーチクエッションを立て、データの収集と分析を行い、全力を尽くし、読み応えのある卒業論文になりました。 全6題のタイトルと論文要約をご紹介します。
なおSFC学生の皆さんは、学内ネットワークからSFC卒プロデータベースで全文を読むことができます。


■2018年9月卒業生■

幼児の保護者が処方薬を購入する際に利用する保険調剤薬局を1つに絞ることによって期待される効果の検討
総合政策学部4年 田中 嘉博

【概要】
かかりつけ薬局制度を持つことが幼児の保護者にとってどのような効果をもたらすのか検証するために子育て世代の17名の母親に対して実施したインタビュー調査、および神奈川県藤沢市の認可保育園3園で実施した保護者アンケート調査(314名中183名が回答)を実施した。その結果、処方薬を購入する保険調剤薬局を1か所に決めている人・ほぼ一か所に決めている人を合わせた割合は全体の39.9%であった。「薬剤師の説明に対する満足度」と「薬剤師とのコミュニケーションの状況」において1か所に決めている人(1か所群)はそうでない人(使い分け群)よりわずかに評価が高かったが、t検定を行ったところいずれも有意な差は認められなかった。また、薬剤師に期待する役割についての質問に対しては「処方薬の効能」「処方薬の副作用」「処方薬の飲ませ方」について詳しく説明してほしいとう回答が183人中それぞれ146人(79.8%)、128人(69.9%)、100人(54.6%)と多かった。これらの結果から、国が推進する「かかりつけ薬局制度」や「健康サポート薬局機能」に対する潜在的な期待はあるものの、その有効活用のために「かかりつけ薬局を持っている人は全体の約4割にとどまっている現状が明らかになった。かかりつけ薬局制度を今後さらに普及させていくためには、薬剤師がどのようなスキルを持っていてどのような役割を果たすことができるのか、そしてかかりつけ薬局を持つことによって利用者にどのようなメリットがもたらされるのかについて、認知度を上げることが重要であるという結論に至った。
キーワード:1. かかりつけ薬局 / 2. 健康サポート薬局 / 3. 幼児 / 4. 保護者 / 5. 薬剤師

多様な農福連携の事例とキーパーソンの役割の重要性と 発展の為の方策 〜4つの異なる先行事例の分析から〜
総合政策学部4年 勝 千織

【概要】
近年、農福連携という言葉がメディアなどで取り沙汰され、少しずつ耳にする機会が増えた。農福連携とは、農業と福祉の連携を図ることで、これまで解決されてこなかった双方の問題をwin-winで解決に導くことができるのではないかというものだ。農業面の問題として、担い手不足、耕作放棄地の増加等がある。福祉においては障害者の働き方や工賃の問題がある。人を求める農業分野と人材を供給できる福祉分野が連携することで両分野にプラスの影響が期待されている。 しかし、現状は農福連携に関する論文や研究も少なく、農福連携の実態把握が現状に追いついていないことが分かった。 そこで本稿では、筆者が農福連携の事例把握として、実際に市民農園や体験農園、NPOを訪れ実態調査を行った。そこでは特に、異なる両分野の橋渡し役となるような人材、キーパーソンの役割が何であるか、彼らの直面している課題とは何か。ということに着目して調査を行った。
キーワード:キーワード:1. 農業 / 2. 福祉 / 3. 農福連携 / 4. キーパーソン / 5. 地域



■2019年3月卒業生■

日本における老年的超越の特徴とそれに至る要因の検討-日本の後期高齢者の語りから-
総合政策学部4年 野田 龍

【概要】
現在先進国を中心に、高齢化が進んでいる。特に日本の高齢化率はトップであり、今後も増加が見込まれる。 そのため、高齢者の生き方を考え、幸福な老後をどのように送るかを考えることは急務である。  そのような中、高齢者の精神的な側面での発達を捉えた「老年的超越」という理論が近年注目されている。この理論は、これまでサクセスフル・エイジングの側面として重視されてきた社会参加の測定などだけではわからない、高齢者の精神的な部分に焦点を当てている理論である。  本研究では日本における老年的超越に至るための促進要因と、その特徴を、インタビュー調査を基に検討する。インタビューは、日本の高齢者の特徴を表し、かつ老年的超越に至っていると考えられる対象に限定するため、後期高齢者(75歳以上)であり、無宗教、人生満足度の高い人を対象とした。   促進要因としては、自己だけでなく、身近な親族の死が要因になること、健康状態、経済状況、人間関係から成り立つ、心配のない生活環境が大きな要因となることがわかった。   また、特徴としては、スピリチュアルな繋がりよりも、実際の物質世界における繋がりを重視していることがわかり、その繋がりを世界規模で捉えている思考も見られた。   総じて、トーンスタムによって示されたオリジナルの老年的超越とは異なる部分が多く見られ、今後、日本における老年的超越概念の一般化に向けた研究がさらに必要である。
キーワード:1. 老年的超越 / 2. 幸福 / 3. 後期高齢者

画像を含むたばこの健康被害警告ラベルと高校生の喫煙意識の関連性について
環境情報学部4年 島田 江里子

【概要】
本国の成人喫煙率は、他先進国の喫煙率と比較しても高く、「健康日本21」によって策定された、平成34年度までに国内での喫煙率を12%に抑える目標も未だに達成されていない。喫煙は呼吸器症状、体調レベルの低下、血管の変化、肺気腫、心血管系疾患など多くの症状を、引き起こし、喫煙期間が長いほどそのリスクは大きいと言われている。また、特に未成年の喫煙はニコチンによる依存を容易に引き起こし、一度喫煙を始めると、抑制することが困難な状態にしばしば陥ってしまう。喫煙者の54.7%は未成年のうちにたばこを経験しており、その経験が習慣化して喫煙者となるケースが多いとされているため、未成年者を対象に自ら喫煙を遠ざける環境作りに力を入れる必要がある。そこで、本研究では首都圏の高校生を対象に、画像を含むたばこの健康被害警告表示は喫煙を遠ざける要因となりうるのか、5つの異なったパッケージを比較するアンケート調査を実施した。 「購入をためらうパッケージ」「健康被害が分かりやすいパッケージ」「喫煙者がタバコを止めると思うパッケージ」という3つの観点より調査したところ、全ての項目において対象者に最も多く選ばれたパッケージには、画像が含まれていた。また、それぞれの印象を調査したところ、画像が含まれているパッケージに対しては「持っていたくない」「喫煙しようと思わない」など、喫煙に抵抗を感じている意見が多く見られた。一方で、日本で使用されているような文言のみの健康被害警告ラベルに対しては、対象者の半数近く(50.1%)が「説明文が長くて読む気が起きない」などの意見を回答しており、警告ラベルの内容が無視されている傾向があることが明らかになった。 以上の結果から本研究では、警告表示に画像を用いることは、未成年に対しても多くの人に強い印象を与え、喫煙を抑制する効果は文言のみの警告表示よりも優れていると結論づけた。
キーワード:たばこ/未成年喫煙/健康被害警告ラベル/たばこパッケージ



パーキンソン病患者が患者会の参加及び同病者との交流から受ける影響
環境情報学部4年 田原 明歩 

【概要】
本研究は、とある都道府県のパーキンソン病患者会である「友の会」に参加するパーキンソン病患者6名にインタビューを行い、パーキンソン病患者がどのようなきっかけで患者会に入会するのか、患者会に参加することによってどのような経験を得ているのか、同病者からどのような影響を受けるのかを明らかにすることを目的とした研究である。研究の結果、パーキンソン病患者は【自らの意思で入会】で入会した人と、【他者からの誘いで入会】した人に分かれた。また、患者会で得ている経験は【同病者と交わることで得る感情】、【信頼できる人との出会い】、【リアルな情報の交換】、【役員としてのやりがい】、【趣味の獲得・広がり】という5つのカテゴリーに分けられ、パーキンソン病患者は患者会に参加することで多様な経験を得ることが明らかとなった。また、インタビューを進めるうちに、対象となった都道府県の友の会の抱える問題点が浮き彫りとなったため、問題解消に向けた提案を行った。
キーワード:1. パーキンソン病 / 2. 患者会 / 3. 同病者 / 4. 交流 / 5. 影響



システマティックレビューを通したスポーツ障害に対する予防プログラムの効果の検討
環境情報学部4年 平山 紘太郎

【概要】
身体活動の量と健康への相関が明らかとなっている昨今、スポーツによって生計を立てるプロのアスリートたちはもちろん、一般の人々にとっても楽しみながら体を動かすアクティビティとして様々なスポーツが親しまれている。運動による外傷・障害の発生を予防することが重要な課題となっている中で、スポーツ障害の予防に対するトレーニングの有効性に注目が集まっている。 本研究では、日本語・英語で執筆された論文を対象に筋力トレーニングやバランストレーニングといったレジスタンストレーニングを用いた予防プログラムとスポーツ障害の関連ついて、システマティックレビューを用いて分析した。 データベース検索により抽出された1468件の論文について、スクリーニングを行い、最終的に10件の論文を採択した。レジスタンストレーニングを含む予防プログラムがスポーツ障害の予防との間に有意な差が見られた研究が4件、一部に有意な差が見られた研究が5件、有意な差は見られなかった研究が1件という結果となった。 これらの点からレジスタンストレーニングを含む傷害予防プログラムは一定の効果があると考えられ、また予防プログラムの効果を得るためには、予防プログラムに含まれるエクササイズのボリュームを減らし実行しやすくすることや、指導者が予防プログラムを遵守できるように教育や理学療法士による支援などを行う必要があると考えられる。
キーワード:1. システマティックレビュー / 2. スポーツ障害 / 3. レジスタンストレーニング / 4. 一次予防