慶應義塾大学 湘南キャンパス 秋山美紀研究室 Miki Akiyama Lab

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HOME > 2018年度 ライフストーリープロジェクト「年配者のライフストーリー〜健幸の語り」

年配者のライフストーリー〜健幸の語り

大病を経て

語り手:K.Iさん

K.Iさん:それでね、引っ越してからも何ヶ月か以前の学校に通い続けたの。もう1人通ってる子がいたんだけれど、おばあちゃんが大病に罹っちゃったのよ。それね、疲れだと思うのよね〜、バスに乗って。それで先生が学校を辞めないで、おいで、おいでって、気持ち良く嬉しく行ってたけど、とうとう4年生に大病になって。バスの往復の間また歩くところもあってね、止むなく辞めたの。姉さん(K.Iさんのお姉さん)は女学校になってね、バスで行くのが普通の学校なんだけど、おばあちゃんは大病に罹って、そして砂町の学校に入ったの。学校ってこんなにも違うかっていうくらい呑気な学校だったの。そういう小学校を出たの。

―入院とかはしてたんですか?

K.Iさん:勿論したわ。

―どれくらいしたんですか?

K.Iさん:1ヶ月はしたと思うのよ。

―どういう病気だったんですか?

K.Iさん:脳漿(のうしょう)っていう、何か頭の脊髄に水か何かが溜まる病気。命はないと言われたのにね、とても良い病院の先生が、これは脳漿だって見抜いて、治療を手掛けてくれたんで、生き返ったの。

―何かそこから変わったりしましたか?命って大切だなぁとか。

K.Iさん:そう、それで私の悲しい人生はね、その時にね、頭の病気でしょ? だから眠れないの夜。その苦しさと悲しさったらないのよ。眠れないんですもん。 そして薬だなんだっていうのは、毎日毎日両親がネギを刻んで枕元に大きなどんぶりを置いてくれたり、りんごをおろしてくれたり、あらゆる世情のね、俗っぽい習慣を全部やったんだけど、治らなかったの。眠れないの。親の方はもっと泣いたと思うのよね、見てるのが辛くて。そしたらね、ちょっとおばあちゃんの悲劇が始まるんだけれど、女工さんがね、あんなにK.Iちゃんが眠れなくて可哀想なら私の兄がお灸屋をやっていると、元気になる人がいっぱいいるから、そこでお灸を据えてみて、やってみるのはどうですか?って。眠れないのが治るっていうなら、こんな大きなお灸をするのよ、それがね嫌じゃなかったの。眠れれば良いって。それでお灸をしてもらって、そしてすっかり治っちゃったの、眠れないのが。

(中略)

―今、幸せですか?

K.Iさん:幸せ(即答)。

―それはどうしてですか?

K.Iさん:だって朝ね、夜眠れない過去があるでしょ、病気で。眠れない苦しさと悲しさってないのよ。だけどおばあちゃんの歳になると眠れない人が多いの。それを思うとね、毎朝起きるとね、健やかに眠らせていただいて、元気にこうして起こしていただいて、ありがとうございますって思うの、感謝ね。眠れた幸せって眠れなかった過去があるからね。

語り手:K.I さんプロフィール

1925( 大正14) 年7 月22 日生まれでインタビューを行った際は93 歳。享年93歳。以前の職業は専業主婦と、疎開時に先生であった。 また小学4 年生のときに、脳脊髄液減少症という病気を患った経験がある。 旦那様は亡くなり、3 人のお子さんと、5 人のお孫さんがいる。 お一人で埼玉県にお住まいだった。


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